小林正弥オフィシャルサイト

MASAYA KOBAYASHI OFFICIAL WEBSITE

千葉大学大学院社会科学研究院教授
千葉大学公共研究センター長
日本ポジティブ・サイコロジー医学会理事
慶応義塾大学システムデザイン・マネジメント研究科特別招聘教授

幸福と公共

本当の幸福は、個々人の徳・人格的強みや資質を発揮し、
ポジティブな心を中心にして善い生き方をすることによってもたらされます。
公共は、様々なコミュニティにおいて人々が共に対話し、考え、行動することによって実現し、
福祉・環境・平和といった共通の善の実現につながります。
「研究テーマ」

「研究テーマ」

■ダイアローグ(対話)
  インターアクティブ教育

■ポジティブ心理学
  ウェル・ビーイング(良好状態)

■公共哲学
  政治経済、福祉・環境・平和
対話力を身につける 「白熱教室」

対話力を身につける 「白熱教室」

 対話は、雑談や単なる会話とは違います。それは、価値観や世界観が異なる人たちの間でも、言葉を交わしてお互いの考え方を深め、発展させることを可能にするのです。

 対話力があれば、意見の相違を超えて、友人間・男女間・家庭・ビジネスの場で素晴らしい人間関係を築くことができます。それは、人格的な成長をもたらし、成功や幸福へと導く秘訣なのです。

 そのためには聴く力・考える力・話す力、そして振り返る力が必要です。対話の技術(アート)を身に付ければ、新しい巡り会いや深い幸福が可能になっていきます。

 マイケル・サンデルのハーバード白熱教室は、モラル・ジレンマを考えさせることによってこのような対話の世界を開示してくれました。テーマについて賛否を問い、意見を交互に述べてもらうことにより、ぐるぐると螺旋状に議論のレベルが上がっていって、意見が一致しなくともそれぞれの意見が深化し、時には共通の理解や、新たな素晴らしい洞察が生まれてきます。

みんなで”公共”を実現する 「公共哲学」

「公共」は、国家や官などのお上を表すことの多い「公」と区別して考えることができます。
阪神淡路大震災の頃から、NPOやNGOなどの活躍によって、人々が水平的に「共に」考えて行動する「新しい公共」が注目され始めました。
個々人が私的利益や快楽だけを追求していると様々な問題が生じます。権利を尊重するとともに「善い生き方」を考えて共通の事柄に関して多様な人々が対話して解決を図ることが必要です。
無縁社会や地方消滅などが心配されているように今ではコミュニティが衰退していますが、共に語り考えることによって、新しい形でそれを活性化させ共通の善を実現することができるでしょう。これは政治の目的そのものでもあります。
コミュニティには、家族・国民・世界などの様々なレベルが存在します。これからは地球的にして地域的(グローカル)な考え方が大事です。
また現在生きている人々だけではなく、過去や将来の世代も考えて、長期にわたる「公共」を考えていくことも必要なのです。
みんなで”公共”を実現する 「公共哲学」
幸福や繁栄をもたらす 「ポジティブ心理学」

幸福や繁栄をもたらす 「ポジティブ心理学」

「善い生き方」は本当の幸福をもたらします。宝くじで大金が手に入るような一時的な快楽とは違い、心からの幸せというような深い幸福であり、時間的にも持続するものです。これは、人生の目的そのものです。

古代ギリシャの哲学者アリストテレス以来、幸せについて哲学的な考察が行われてきましたが、2000年頃からアメリカ心理学会会長だったマーティン・セリグマンが提唱してポジティブ心理学が発展し、科学的にも幸福や繁栄をもたらす心理が研究され始めました。

楽観主義や愛情、感謝などのポジティブな感情は健康や学業・成功につながる傾向があることがわかったのです。個々人に内在する人格的な徳や強みを見つけて発揮し、仕事や活動などにおいて活かし、潜在的な可能性を開花させることによって、良好な状態(ウェル・ビーイング)となり、繁栄し生成・発展することができます。

このような状態は、ポジティブな感情・没入・ポジティブな人間関係・意味・達成感などの指標によって調べることができます。

健やかな心身と社会を目指す 「哲学と科学」

 主にこれまでの心理学や医学は病気からの回復を目指し、社会科学も独裁や抑圧の防止を目標としていました。ポジティブ心理学やコミュニティ心理学と公共哲学、さらに言えば科学と哲学を架橋することによって、健やかで幸せな善い人生と社会も積極的に作っていくことができるでしょう。

個々人が幸せになるために、ポジティブ介入と言われる方法が科学的に開発されています。自分の特性や長所・弱点を認識して人格的な成長を図れば、開花と繁栄への道が開かれます。古代ギリシャの哲学者アリストテレスがエウダイモニアと言ったような善き幸福(善福・清福)へと近づくことができるのです。

 さらに、人間関係・コミュニティ・組織・政治経済などにおける良好状態にも目を向け、他の人々と共に考えて共通の善を実現することによって、みんなが幸せを感じることができるような健やかな社会へと近づくことが可能になります。

 こうして公共的な幸福の実現も目指したいものです。

健やかな心身と社会を目指す 「哲学と科学」
ポジティブな政治経済と正義を考える 「コミュニタリアニズム」

ポジティブな政治経済と正義を考える 「コミュニタリアニズム」

 「善い生き方」を念頭に置いて正義を考える政治哲学を「コミュニタリアニズム」と言います。美徳に基づく共生思想です。自由とともに、対話によって共に考えて共に行動することを重視し、「共通の善」の実現を目指します。

 経済や経営においても、ミッション・目的・意味や徳、チーム意識、協力、公共善、対話的リーダーシップなどのポジティブな発想が大きな役割を果たすことがわかってきました。

 格差や不公正は幸福感を減少させます。公共政策によって福祉・環境・平和などを実現することが大切です。地域包括ケアなどの医療・看護やポジティブ教育、エコロジー的な社会、内的平安に支えられた深い平和の実現なども、ポジティブな哲学や心理学に基づいて考えることができます。

 世界の貧困問題や地球環境問題などのように、正義や公正は地球的な課題でもあります。だからこそ、グローカルな視点で考えることが大事なのです。

BOOK(著書)

政治的恩顧主義論(クライエンテリズム)—日本政治研究序説
(東京大学出版会)
ネクスト—善き社会への道
(麗沢大学出版会)
憲政の政治学
(東京大学出版会)
平和憲法と公共哲学
(晃洋書房)
ハーバード白熱教室講義録+東大特別授業(上)(下)
(早川書房)
サンデルの政治哲学-< 正義>とは何か
(平凡社新書)
日本で「正義」の話をしよう〔DVDブック〕サンデル教授の特別授業
(早川書房)
サンデル教授の対話術
(NHK出版)
日本版白熱教室 サンデルにならって正義を考えよう
(文春新書)
対話型講義 原発と正義
(光文社新書)
コミュニタリアニズムのフロンティア
(勁草書房)
コミュニタリアニズムの世界
(勁草書房)
人生も仕事も変える「対話力」 日本人に闘うディベートはいらない
(講談社+α新書)
アリストテレスの人生相談
(講談社)
神社と政治
(角川新書)
『東洋経済ONLINE』
(インタビュー)

信濃毎日新聞書評
角川書店『本の旅人』自評

BOOK2(共著・執筆協力作品)

広井良典編
『福祉の哲学とは何か:ポスト成長時代の幸福・価値・社会構想』(ミネルヴァ書房)

第2章「福祉哲学の新しい公共的ビジョン―コミュニタリアニズム的正義論とポジティブ国家」(小林正弥)
浅井篤・小西恵美子・大北全俊編
『倫理的に考える医療の論点』(日本看護協会出版会)

第1章「医療は人間の幸福にどのくらい寄与できるだろうか―哲学的・倫理的思考の意義」(小林正弥)

PROJECT(研究活動)